片親疎外と虐待で、子どもの反応はどう違うか
子どもが別居中の親を拒むとき、その理由はいくつかに分かれます。親から虐待を受けたなど、実際の体験にもとづく場合と、同居している親の影響で、体験とつり合わない拒否が生じている場合(片親疎外)です。意見書の作成で、この違いを検討する場面は少なくありません。反応に出やすい違いを、研究と当方の経験から整理します。
最初にお断りします。子どもの反応だけで、原因を決めることはできません。また、「片親疎外」は精神疾患の診断名ではなく、概念や使い方について議論が続いています。ここで述べる違いは「出やすい傾向」であり、個々の事案に当てはめて断定するためのものではありません。
虐待などの体験があって、親を避けている子ども
- 愛着が残っている。親から愛されたい気持ちと、怖い、近づきたくない気持ちの間で揺れます(アンビバレンス)。当方の経験では、虐待を受けた子どもの多くは、それでも親を愛していて、親から愛されたいと願っています。
- 理由が具体的で、体験に即している。何が、いつ、どのようにあったかを、子ども自身の言葉で語れます。
- 距離を置きたいが、関係を断ち切りたいとまでは言わないことが多い。会う頻度や方法を制限したい、という形で表れます。
- 親を悪く言うことに、ためらいや罪悪感を示すことがあります。
片親疎外が疑われる子ども
- 良心の呵責が見られない。別居している親を拒否することに、罪悪感やためらいが見られません。
- 時間の経過とともに、別居親を「悪者」にしていく。攻撃的な言動や、相手を見下すような言動が目立つようになることがあります。
- 理由が些細で、体験とつり合わない。拒否の強さに比べて、挙げられる理由が小さく、具体的な出来事が語られません。
- 同居している親の言い分を、台本のように繰り返す。子ども自身の体験ではなく、大人の言葉や評価が出てきます。
- 別居親の親族まで拒否する。祖父母など、これまで関係が良かった人にも広がります。
- 同居親は完全によい親で、別居親は完全に悪い親、というように、見方が一方に偏ります。
これらは、Kelly と Johnston が、疎外された子どもの特徴として整理した内容と重なります(参考文献参照)。同じ研究では、子どもを、虐待など正当な理由のある「疎遠(estranged)」と、「疎外(alienated)」に分けて考えています。
時間の経過を見る
ある時点の様子だけでは、区別がつきにくいことがあります。別居の前の親子関係、別居直後の様子、その後の変化を、時間の流れで見ます。別居の前は親を慕っていたのに、同居親のもとで暮らすうちに、理由の見当たらない拒否に変わっていった場合は、検討が必要です。
見分けるために見る資料
- 別居前の写真、LINEなどのやり取り、日記、学校や園の記録
- 子どもの発言がいつ、どのような場面で出たか、そのときの文言
- 面接や聴取が、誘導にならない形で行われたか(司法面接の質問の仕方と、子どもの発言の信用性)
- 調査官報告書が、これらの点をどう扱っているか(調査報告書を心理学的に検討する5つの視点)
虐待と疎外が、重なることもあります
実際の事案では、虐待に近い体験と、同居親の影響の両方が重なることがあります。また、片親疎外だと決めつけて、子どもの訴えを退けることも、逆に、確かな根拠なしに虐待だと断定することも、子どもの利益を損ないます。虐待が疑われるときは、子どもの安全を最優先に、まず事実の確認が必要です。DVを理由に別居した方からのご依頼について →
意見書での扱い
当方の意見書では、資料から確認できること、心理学的に推論できること、資料からは言えないことを分けて書きます。子どもの反応だけで、どちらかだと断定することはしません。結論を先に約束することもありません。ご相談はこちら →
参考文献
- Kelly, J. B., & Johnston, J. R. (2001). The alienated child: A reformulation of parental alienation syndrome. Family Court Review, 39(3), 249–266.
- Fidler, B. J., & Bala, N. (2010). Children resisting postseparation contact with a parent: Concepts, controversies, and conundrums. Family Court Review, 48(1), 10–47.
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